- ● はじめに
- ● ゼータ電位測定装置
はじめに
ゼータ電位は、帯電した表面(例えば、コロイド粒子や微粒子)が電解質溶液中で相対的に移動する際に、その表面に近い液相との間に生じる電位差です。具体的には、帯電した表面に固着している固定層(数分子程度の厚さ)と、その外側に存在する滑り面(スリッププレーン)との間に生じる電位がゼータ電位です。
ゼータ電位は、固定層の外端に位置する滑り面での電位であり、これは通常、電気二重層の内側に存在するステルン層での電位とは厳密には異なります。しかし、実際の計算や実験では、ゼータ電位はステルン面電位と近似的に等しいとされることが多く、これにより、ゼータ電位は拡散電気二重層の起点電位として扱われることが一般的です。
ゼータ電位は、界面動電現象(例えば、電気泳動や電気浸透など)において、帯電表面が実効的に溶液層に対して保持する電位として重要です。この電位が高いほど、粒子間の反発力が強くなり、コロイドや分散系の安定性が増します。逆に、ゼータ電位がゼロに近づくと、粒子は凝集しやすくなります。この特性を利用して、ゼータ電位は分散安定性の指標として、多くの産業分野で応用されています。例えば、塗料やインクの品質管理、薬剤の分散安定性の評価、さらには水処理や食品加工の分野でも重要な役割を果たします。